第14章
朝まで飲むぞ!大コンパ!
PM 5:30 「慎悟さん!」 リーが勢いよく慎悟の部屋のドアを開けた。 慎悟はスポーツ新聞の18禁の記事をコソコソと読んでいたので飛び上がって、驚いた。 「リーか・・・」 慎悟は新聞越しにリーを見るとまた新聞を読み始めた。 リーは慎悟の前に行くと新聞をもぎ取る。 「おまえが俺に対してそういう態度をとる時はけっこう一大事の時なんだよな」 慎悟はそう言いながら拳を握った。今すぐにでもリーを殴ってやりたいという感じだ。 たかが18禁の記事を読めないくらいで怒ると言うのは幸せな奴だ。 怒っている慎悟に対し、リーも相当怒っている。二人は今すぐにでも派手な格闘シーンを演じられそうだ。 「一大事ですよ!なんでミナさん達に僕を手伝わせるんですか!」 リーが大声で言う。 慎悟は、今自分が聞いた言葉が間違っているのでは無いかと思った。 「おまえが怒ってるのはそんなことか?」 「そうです!」 リーが思いっきり反論する。 「その意見は拒否させてもらおう」 慎悟はそう言ってリーから新聞をもぎ取る。 「両刃さんなら優しくOKしてくれますよ」 リーが新聞を引っ張りながら言った。 「おまえら二人で女性不信の会でも作るつもりか?」 「僕は女性不信なんかじゃありません!」 「おい。こんなことで議論してる場合かよ。それより両刃はまだ帰ってこないのか?」 慎悟が新聞を離すと、新聞を引っ張っていたリーが後ろに数メートル吹っ飛んだ。 「両刃さんならまだ帰ってこないです。携帯に電話したんですけど電源切ってるみたいで」 「ふ〜ん」 そう言うと慎悟は時計を見た。 「そろそろ麗菜は出かけたか?」 「はい。ミナさん達と一緒に出かけました。ミナさんたち服を取りに行くそうで、少し早めに出ました」 「どこに飲みに行くって?」 「品川です」 いったん落ち着いたリーだが、ミナの名前を言ってから、また慎悟に文句を言い始めた。 「わかったよ。うるさいな」 そう言うと慎悟は電話を手に取った。 「どこにかけるんですか?」 「内緒」 一言でリーの質問に答えると慎悟はリーにあっちへ行けと手で合図した。 リーは頬を膨らませると慎悟の部屋を出て行く。 両刃は新幹線の中で寝ていると、自分の携帯が鳴って驚いた。 両刃は慌てて胸ポケットに手を入れる。 両刃は携帯の電源は切った覚えがった。実際、電源は切ってあった。そして、よく聞いてみると、鳴っている着メロはミッキーマウスのテーマ曲だ。両刃はそんな着メロはいれた覚えが無かった。 着メロは両刃の背広の右内ポケットで鳴っていた。 両刃が内ポケットに手を入れてみると驚くほど小さい携帯が入っていた。 両刃は電車の連結部分に行くと電話に出た。 『あ、両刃?』 慎悟が待ちくたびれたように言った。新幹線で、連結部分まで電話を持っていくというのは結構時間がかかるのだ。 「この携帯はおまえのか?」 両刃の声にとげが出てきた。 『そう。おまえ、一日の8割くらい携帯の電源切ってるからほとんど電話かけてもつかまらないだろ。だからこの間買ったんだ。おまえが出かける時とかはいつも内ポケットに入れさせてもらってるよ』 「入れるのはいいとしても、着メロは考えろ!」 両刃が怒鳴る。 『俺は好きだけどな・・・』 慎悟はそう言いながら、電話の向こうで必死に笑いをこらえていた。 「おまえなぁ!」 両刃が怒鳴るが、慎悟が一言言うと、呆然として携帯を落としそうになった。 「わかった。急いで帰る」 両刃はなんとか両手で携帯を支えるとそう言った。 が、切ったあとに気づいたのだが、新幹線に乗っているので急ごうが回ろうが東京に着く時間は変わらないのだ。 両刃は自分のバカさにあきれながら席に戻った。 「じゃあ、まず乾杯しますか」 そう言って合コンの幹司がグラスを握る。男性人が全員グラスを握るのを見て麗菜達もグラスを握った。 「ではかけ声にあわせて・・・」 「あさまで飲むぞぉ!」 コンパの会場は品川のホテルの二階にあるフランスレストランだ。少し広めの個室が一つ貸し切りになっている。 「いや〜、今日はうれしいな。今日ほど全員きれいなことなんてめったに無いよ」 会社帰りに見える一人の男がビールを一気飲みしながら言った。彼の名前は秋山だ。 「そんな〜」 美実はテレながら男のグラスにワインを注ぐ。 美実は笑っているが、美実は正直この男はダメだと思っている。 男の言葉は合コンを何度も経験していると言ってるのと同じなのだ。めったに無いということはそれだけ経験がある。仮にその言葉が女側をほめているのだとしても、そういう言葉を酒と一緒に言う男は信用できないやつが多いのだ。 ミナ、美樹、美実、麗菜の四人は昔から一緒に何度も合コンをしたことがあるからそう言うのはよくわかるのだ。 「ミナが俺の高校時代の同級生だからセッティングできたんだからな」 幹司の男が言う。 「そうよね」 ミナがうっとりと幹司を見つめる。 その表情を見ていた麗菜達の三人は、みなは昔は幹司の男が好きだったのがわかる。 「でもあとの一人はどうしたんですか?」 美樹がワインを飲み干していった。 「ああ。遅れるって連絡があったよ」 幹司が美樹に声をかける。幹司は美樹に興味があるようだ。 「すみません、おくれて」 麗菜の席の後ろにある入り口で声がした。麗菜が後ろをのぞくと麗菜はその形で固まった。 そこに立っていたのは木古内城だ。 美実たちの顔が固まる。ただしミナは特に驚いている様子は無い。 「麗菜さん!また会えましたね!」 麗菜は頭の中で慎悟が何か仕組んだのではないかと思った。 「それって癒着なんじゃないんですか?」 リーが慎悟の家の台所でラーメンを煮ながら言った。 「おまえはたまに日本語を間違えるのによく癒着なんて言葉を知ってるな」 慎悟が玉ねぎを高速でみじん切りにしながら言った。 麗菜がいないので夕飯は慎悟が作ると言ったらリーが手伝いに来たのだ。 日常で慎悟は針砕流を使って料理をしている。針砕流の創立者はそんなものに使うつもりで針砕流を創ったのではないという事を慎悟は知らない。 慎悟は今朝、両刃の家を出る時にミナに合コンのセッティングを変えるように依頼したのだ。男側の一人に中止と伝え、慎悟は木古内が来るようにしたのだ。 それにより、慎悟はビートの情報を得られた。警察庁ではすでにビートの正体がわかっていたのだ。 ビートの正体は慎悟の考えるとおり天然中学校の風上創次だった。 「でもやっぱり癒着なんですか?」 リーがしつこく聞くので慎悟はフライパンを熱し始めて無視をした。 「とりあえず木古内には黙らせなければならないことは全て黙らせてある。問題ないだろ」 炒飯(チャーハン)の具を炒め始めると慎悟は言った。 「麗菜さんが文句言わないでしょうか」 リーが腕を組んで言った。 麗菜なら慎悟の行為について一時間は文句を言えるからだ。 「大丈夫だろ」 そう言って慎悟はにっこり笑った。 「えー!そうなんですか!」 美実が木古内の隣で驚く。木古内が、自分は慶応大学法学部を成績トップで合格した、と言ったところだ。 すでに木古内はこの程度の自慢話を1時間近く、延々と並べている。 麗菜はこの手の自慢話があまり好きでは無いので木古内を嫌っているが、美実は木古内に好意を抱き始めていた。それに伴い木古内も麗菜より美実が好きになってきている。 この合コンで、でき始めている友好関係を話すと、美実と木古内はすでに付き合いそうで、美樹と幹司もいい感じになってきている。だが、ミナは幹司と一緒になりたくて、秋山は美樹と一緒になりたい。麗菜は余った男、佐渡といい関係になりつつある。 この合コンで美樹達の四角関係は激しいもので、美樹と幹司は今にも二人きりになろうとしている。だがそれを邪魔しようとするミナと秋山。『あいのり』さながらの恋模様が描かれようとしているのだ。 麗菜は隣で美実と木古内の会話を聞いて前よりずっと木古内がいい人に見えてきた。もともと木古内はいいやつだったのだが、片水慎悟探偵事務所所員はなぜか木古内がイヤなやつだと思っている。 麗菜は明日にでもその誤解を解いてやろうと考えていた。 「こちらへどうぞ」 個室の外から声がした。 個室から外をのぞける窓があり、麗菜はふと外を見てみた。 その時、麗菜は自分が見たものが幻であるよう神に祈った。 昨夜のリーが取り逃がした傷の男が正面の個室に入って行ったのだ。片手にはアタッシュケースを持っている。 「どうかしましたか?」 佐渡の言葉に麗菜は答えず、バッグから携帯を取り出すと慎悟の家に電話する。 「なにかありましたか?」 横に座っている木古内が麗菜に声をかける。 「緊急事態」 麗菜はそう言った。一時間前の麗菜なら木古内を完璧に無視していたが、今はなぜか木古内に対して優しくなれるというか、素直になれた。 「さっきまでの自分がウソみたい・・・」 化粧品のCMの言葉をつぶやいたら慎悟が電話に出た。 『ふぁい』 電話の向こうでは慎悟が口の中にラーメンと炒飯と野菜炒めを一緒に口に入れて電話に出ている。 「あ、慎悟?今品川のフランスレストランにいるんだけど昨日の事件の傷の男が私たちの個室の前にいるの」 慎悟が口の中に物を入れて電話に出るのはたまにあるので麗菜は特に驚かずにそう言った。 電話の向こう側でもごもごと音がして普通の慎悟の声が出た。 『どこのフランスレストランだ』 電話の向こうでリーを呼ぶ声がする。 「品川の××町の「ベッソンズ」っていう店」 麗菜がそれだけ言うと慎悟は電話を切った。 「麗菜さん、本当ですか」 木古内が携帯を手にとりながら聞いた。 「ええ。あの頬の傷は見間違いようが無いわ」 ほかのメンバーも麗菜と木古内が急に事件だの傷だのと話し始めたのでただ事では無いと判断し二人をじっと見ている。 「みんなできるだけ落ち着いてくれ。さっきみたいに明るく話をしていてくれ」 木古内が急に警察らしくなり、携帯で部下を呼ぶ。 その姿を見ながら麗菜はやっぱり木古内を好きになるのはいいのかもしれないと思った。 「慎悟さん、僕は運転免許を持っていません」 慎悟が片水探偵事務所の地下にあるガレージに向かいながら言った。ほとんど使われないが、黒いワゴン車が一台置かれている。一番最近使ったのは麗菜を仲間にした日だ。 「誰もおまえになんか運転は頼まないよ。運転するのは俺だ」 慎悟はそう言いながらガレージに入ると車のカギが置かれているフックを真っ暗な中、手探りで探した。 「十八歳未満の運転は日本では認められてないでしょう」 「俺を誰だと思ってる?片水慎悟だぞ」 慎悟は鍵を見つけるとさっさと車に向かう。 「俺は両刃と探偵事務所を始めて数ヶ月で運転免許証を取りにアメリカに行ったんだ」 慎悟はそう言うと車に乗った。リーも後に続く。 「アメリカじゃあ免許証なんかカップラーメンみたいなもんだ。取ろうとすれば一日で取れる。もらったら日本に戻ってくる。アメリカの免許証は日本でも使えるんだ。だから俺は運転できるの」 慎悟はそう言って車を外に出す。事務所のある辺りは車はほとんど通らないから左右を確認しないで飛び出した。 「道路交通法に違反してないんですか?」 リーがしばらく黙ってから聞く。 「大丈夫。俺が東大卒業した時点でたいていの法律は免除されるようになったから」 慎悟はそう言って品川に向かってスピードを飛ばし始めた。 「慎悟さん、法定速度を守ってください!」 リーがシートベルトを締めながら言う。 「はいはい」 慎悟はそう言ってワゴン車の屋根にパトランプを付けた。 「これで法定速度は無くなった」 そう言う慎悟はなんだかとても楽しそうだ。 麗菜達の個室の中はだいぶ盛り上がってきた。前の個室には平気で人に銃を撃つ凶悪犯がいるといううことを酒が入ってきたせいで忘れているようだ。ただし酔っているのは木古内を除く男性人だ。木古内と麗菜は一杯も飲まずに前の個室を見張っている。ミナ、美樹、美実の三人は酒に強いのでまったく酔っていない。全員一升は軽く飲んでいるのだがまったく飲んだ気配を見せていない(一升を休憩を取らずに飲むと急性アルコール中毒になるので読者はご注意を。これはミナ達だからできるワザだ)。 「昨日、君達を逃がしたから詳しい事情聴取ができていないんだが、今聞かせてもらっていいかい?」 木古内が窓から傷の男の個室をのぞきながら麗菜に言う。 「昨日あのダンスバーで取引があったの」 「それは知ってる」 木古内が内ポケットから警察手帳を取り出して言った。 「あの太った女は金髪の男と銃の取引をしていたんだったな」 横書きの手帳をたてに読みながら木古内が言う。麗菜がそのことを疑問に思って聞く。 「警察手帳を縦に書くのは全ての警察がやってることだよ」 木古内が窓から視線をはずし、麗菜の目を見て言った。 「誰が始めたの?」 麗菜の質問に木古内が首をひねる。 「まあ、それはいいとして。その傷の男って言うのは金髪の男の仲間だ。金髪の男が言うには、今日の取引がつぶれた場合また次の日に別の取引があると言ってた」 「じゃあここで取引があるんじゃないの」 麗菜はそう言って男が持っていたアタッシュケースを思い出す。 「取引の内容って言うのは?」 麗菜が木古内に聞く。 「今回は金と銃だ。傷の男が銃を3丁と言っていた」 「もう一人の男はそこまで話したの?」 「ああ。ただどうしても取引の場所だけは言わなかった」 木古内はそう言ってハードボイルド風にニヤリと笑った。 「でもついてたよ。場所を聞く必要も無く取引の場所に俺はいるんだから」 木古内の笑い方は麗菜にとって徐々にかっこよく見えてきた。 「リー。おまえはここで待機してろ」 慎悟がレストランのあるビルの前に車を止めて言った。 「おまえはこの車の前にいろ。そこから動くな。すぐに警察が来てどけと言うだろうが片水慎悟の助手だと言え」 「それで大丈夫なんですか?」 リーが不安そうに聞く。 「昨日の事件の担当が木古内なら多分その上司の満濃さんも来るだろう。満農さんは覚えてるな?」 慎悟の言葉にリーは頷く。 満農さんというの木古内の上司で慎悟とも親しい刑事だ。名は体を現すを実践しているらしく、本名の満濃満太と言う名前のとおり、著しく太っている。 「困ったら満農さんをあてにしろ。じゃあ行ってくる」 慎悟はそういうと車を降りてビルに入っていった。 「責任重大」 リーはそうつぶやくと車の外に出た。 ビルを見上げるとワゴン車の屋根がちょうど一階の天井ほどだ。ワゴン車の上には大きい窓があるからもしもの時は2階から窓を割って脱出ができる。 リーはそんなことを考えてビルの入り口を見た。 慎悟くらいの身長の少年がすごい速さでビルの中に入って行った。 リーはそれを視界の端でしか捕らえなかったため、あまり気にしなかった。 しかし、それはビートだった。 |
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