後書き
物語は終わらない。
(・・・著者の言葉・・・)
さて、ここまで私は一気に話を書いたのだが、疲れたのでいったん話を止めよう。
私は石神両刃。この話を書いている者だ。
なぜ、私がこんな長い話を書いているのか。実はこれは、慎悟の一生を記録する話しだ。これを書いていることは私以外誰も知らない。慎悟もだ。すでに私は10話書いた。これが11話目だ。
話がそれた。
ここで話を止めて著者である私がこの文章を書いているのは、ある事実を書くためだ。ある私だけが知っている慎悟もしらない事実があるからだ。
まず、話は私が東京で夜に慎悟の部屋へ行き、沖縄で総理の警護をすることになったことを話しに行った時だ。
慎悟の部屋には監視カメラが仕掛けられている。これはもしもの時、私がすぐに駆けつけられるようにだ。このカメラはいつもウラの所員が見ていて、録画もされている。私は慎悟の部屋を訪れてからすぐにウラの所員と一緒にそのカメラを見ていた。そのとき、こういう状況だった。
「・・・消滅しないように工事が行われ、波による浸食から岩礁を保護している。東京都小笠原村に属し、昭和六年(一九三一)日本領になった。これくらい」
「・・・辞書見た?」
慎悟が数秒間、口を開けてから言った。
「持ってないでしょ」
「だよね・・・」
慎悟はあまりに詳しく知っているので念のため聞いてみたが当たり前の回答が帰ってきた。
「大学で何を選考していた?」
「外語学よ」
慎悟はこの知識をどう身につけたかが気になった。
「まあいいや。とにかくその日本領になったってところが重要なんだけどね、・・・
これだ。
注目して頂きたいのは、月島が大学で何を専攻していたか。そう、外語学だ。
さて、ここでみなさんは大きな矛盾に気づくであろう。
大学で専攻していたのは外語学だった。だとしたら、慎悟とケンの英語の会話を聞き取れて、意味もわかっただろう。
慎悟とケンはそんなことはまったく知らず、堂々と月島の目の前で話してしまったのだ。
慎悟が言っていたこと、
月島は慎悟の姉。
つまり、ケンは月島の母親でもある、慎悟の母親を殺したことが月島にはわかったのだ。
だから月島はヘリであんなに慎悟に反論したのだ。
月島はヘリで、
なぜ慎悟の親を殺した犯人を助けたのか?
と、聞いたのではなく、
なぜ私の母親を殺した犯人を助けたのか?
と、聞きたかったのだ。
だが、慎悟は月島が英語がわからないで、ケンが月島の母親を殺したという事は知らないと思っている。
だが、月島は知っている。しかし月島は二人が何を話していたかわからない。そうウソをついた。
慎悟は月島に言わなかった。ならばあえて知っていると月島は慎悟に言う必要も無い。月島はそう思ったのだ。
慎悟は月島が知っていることを知らない。
知っているのは私だけだ。
なぜ私がこれを書いたのか。
それはこれを読んでいるあなたに月島の気持ちを考えて頂きたいのだ。
小さいころから母親がいなく、
その母親とは再開する前に殺され、
そして自分の義理の弟にその犯人は助けられた。
月島はその時どう思ったのか。
そして、生まれるはずのなかった子供、片水慎悟。
彼は生まれてはいけなかった子供だった。
しかし彼が生まれなければ日本の事件未解決量は三倍になっていた。
しかし、慎悟が生まれたことで、こんなに悲しい矛盾が起きている。
慎悟はこの状況でどう思っているのか。
それは私にはわからない。私は、月島がどう思ったのか。
そして慎悟の悲しい人生を、これを読んでいるあなたに考えていただきたいのだ。
物語は終わらない。
確かに、慎悟は生意気で、めんどくさがり、むかつくようなガキだ。だが、俺はそんな彼に同情している。
だから、俺はこの物語を書き続ける。
そう、物語は終わらない。
追記
どうでもいいことだが、木古内が沖縄から帰ってきて、麗菜にプロポーズをした。
もっとどうでもいいが、麗菜は一瞬の迷いもなく断ったそうだ。
〈続く〉